中小企業に産業医がいない時の対応【2026年】
この記事の要点
- 常時50人未満の事業場は産業医選任の義務がなく違法ではない
- 50人未満でも地域産業保健センターを原則無料で利用できる
- 嘱託産業医の費用は月数万円から10万円超まで幅がある
中小企業に産業医がいないのは違法ではない
常時使用する労働者が50人未満の事業場では、産業医の選任義務そのものがないため「産業医がいない」状態は法律違反にあたりません。ただし労働者の健康管理やストレスチェックへの対応は別途求められており、産業医なしでも代替手段を整える必要があります。
具体的には、まず自社が「選任義務のある50人以上」なのか「努力義務にとどまる50人未満」なのかを確認することが最初のステップです。従業員数は事業場単位でカウントするため、本社と支店を合算せず、各事業場ごとに判定する点に注意が必要です。
産業医の選任義務ラインは「常時50人以上」
労働安全衛生法では、常時50人以上の労働者を使用する事業場に産業医の選任を義務づけています。50人未満の事業場は「地域産業保健センター」などの活用による労働者の健康管理等を行うよう努めることとされ、罰則を伴う義務ではありません。
一方で、常時50人以上の事業場が産業医を選任せずに放置した場合は是正勧告の対象となり、改善が見られなければ罰則が科される可能性があります。従業員数が49人から51人に増えたタイミングで選任を忘れるケースがあり、增員計画がある企業は早めの準備が望ましいといえます。
50人未満でも必要になる場面がある
50人未満であっても、以下のような場面では専門家の関与が実質的に必要になります。
- 従業員からメンタル不調の相談が増えてきた
- ストレスチェックを実施したいが実施体制がない
- 長時間労働者への面接指導が求められる状況になった
- 休職・復職の判断に医学的な意見が必要になった
こうした場面で産業医がいないまま対応を進めると、復職可否の判断が主観的になり、後にトラブルへ発展するケースがあります。従業員数が40人台でも、業種によってはメンタル不調者の発生率が高く、早期に相談窓口を確保しておいた方が結果的にコストを抑えられる場合があります。
産業医がいない中小企業の具体的な対応策
選任義務がない規模の企業でも、現実的に取れる選択肢はいくつかあります。費用や手間の負担感が異なるため、自社の状況に合わせて選ぶことが重要です。
地域産業保健センターを無料で利用する
各都道府県の労働局が設置する地域産業保健センターでは、50人未満の事業場を対象に、健康相談や面接指導、保健指導を原則無料で提供しています。利用には事前登録や予約が必要なケースが多く、対応できる相談件数にも限りがあるため、繁忙期は予約が取りづらいことがあります。まずは管轄の労働局や厚生労働省の案内で最寄りのセンターを確認するとよいでしょう。
非常勤・嘱託の産業医と契約する
義務がなくても、月1回程度の訪問や電話相談のみで契約できる嘱託産業医サービスを利用する中小企業もあります。費用相場は企業規模や訪問頻度によって幅があり、月数万円程度から契約できるプランもあれば、ストレスチェックの実施・分析込みで月10万円を超えるプランもあります。契約前に「訪問回数」「ストレスチェックの対応有無」「緊急時の連絡体制」を書面で確認しておかないと、いざという時に動いてもらえないという失敗につながります。
社会保険労務士や産業保健師に相談する
産業医そのものでなくても、社会保険労務士や保健師が労務管理・メンタルヘルス対応の初期窓口になるケースがあります。法的な対応の要否を切り分けたうえで、必要な場面だけ産業医やカウンセラーにつなぐ運用にすると、固定costを抑えながら体制を作れます。
ストレスチェックの外部委託を活用する
常時50人以上の事業場はストレスチェックの実施が義務ですが、49人以下は努力義務です。義務がない規模でも、外部の実施機関にまとめて委託すれば、産業医を自前で確保せずに最低限の仕組みを整えられます。委託費用は従業員1人あたり数百円から千円台まで幅があり、面接指導をセットにするかどうかで変動します。

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産業医不在のまま運用を続けると、以下のような失敗が起こりやすくなります。
- 休職者の復職可否を人事の判断だけで決めてしまい、再休職後にトラブルになる
- ストレスチェックを実施したが、高ストレス者への面接指導の受け皿がなく放置される
- 従業員数が50人を超えたことに気づかず、選任義務違反の状態が数カ月続く
- 嘱託産業医と契約したものの、訪問頻度が少なく実質的に機能していない
これらは「産業医がいない」こと自体よりも、「代わりの仕組みを用意していない」ことが原因で起きています。産業医の有無にかかわらず、相談窓口と判断基準を明文化しておくことが、トラブル予防の基本といえます。
まとめ:まず従業員数と現状のリスクを棚卸しする
中小企業で産業医がいない場合、最初にすべきは自社の従業員数が選任義務ライン(常時50人以上)に該当するかどうかの確認です。該当しなければ違法ではありませんが、メンタル不調者の増加や休職者対応など、産業医相当の判断が必要になる場面は規模にかかわらず発生します。
地域産業保健センターの無料相談、非常勤産業医との契約、ストレスチェックの外部委託など、負担の異なる選択肢を組み合わせることで、専任の産業医を置かなくても最低限の体制は構築できます。自社の状況が複雑な場合や、既に休職者対応で判断に迷っている場合は、厚生労働省の情報を確認したうえで、社会保険労務士など専門家に早めに相談することをおすすめします。
よくある質問
- Q. 従業員30人の会社でも産業医は必要ですか?
- A. 労働安全衛生法上、常時使用する労働者が50人未満の事業場には産業医の選任義務はありません。ただしメンタル不調者が出た場合など、実質的に専門家の関与が必要になる場面はあるため、地域産業保健センターなどの活用を検討するとよいでしょう。
- Q. 産業医がいないままストレスチェックをしないとどうなりますか?
- A. 常時50人以上の事業場はストレスチェックの実施が義務で、怠ると是正勧告や罰則の対象になり得ます。49人以下は努力義務ですが、外部機関への委託で体制を整えておくとリスクを抑えられます。
- Q. 非常勤の産業医と契約する場合、何を確認すべきですか?
- A. 訪問頻度、ストレスチェックの実施・分析への対応有無、緊急時の連絡体制の3点を契約前に書面で確認することが重要です。確認が不十分だと、必要な時に対応してもらえない失敗につながります。